第27回名作劇場 読書会開催レポート ~自由紹介型~
読書会テーマ:古典・近代文学~自由紹介型~

【第27回名作劇場 読書会開催レポート 】
2019年10月13日(土)14時30分~16時30分 @ IMANO TOKYO GINZA CAFE
10月は、公園でレジャーシートを敷いて青空読書会を予定していたのですが…
前日の台風の影響で、急遽レンタルスペースでの開催に変更させていただきました。
開催内容や場所に変更が生じ、参加者の方にはご迷惑をお掛けいたしました。
まだ台風の影響が残るなかご参加くださった皆さま、本当に本当にありがとうございました!
また、キャンセルとなってしまった方も、ご検討いただきありがとうございました。
※※ 以下、ネタバレを含む場合がありますのでご注意ください※※
◆◆◆ 紹介された作品とイチオシの一文 ◆◆◆
おすすめポイント、イチオシの一文と合わせてご紹介させていただきます。
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『夜の来訪者』J・B・プリーストリー(イギリス1945年) 裕福な実業家バーリング家で、娘の結婚祝いが開かれていた。当主、妻、娘、息子、婚約者が団欒していると、警部を名乗る男が訪れる。「今夜、ある貧しくて若い女性が自殺した」と。自殺した女性のことなど知らず、自分とは無関係だと思っていたが、警部は家族ひとりひとりがそのことに深く関わっていることを暴いてゆく…。
おススメポイント 暴かれる人間性/他人の人生への責任/どんでん返し/階級社会への批判
* 一人のエヴァ・スミスは、この世を去りました―しかし、何千万、何百万という無数のエヴァ・スミスのような男女が、わたしたちのもとに残されています。かれらの生活、かれらの希望や不安、かれらの苦しみや幸福になるチャンスは、すべて、わたしたちの生活や、わたしたちが考えたり、言ったり、おこなったりすることと絡みあっているのです。
― 無情の連鎖。自分の些細な言動や一時的な感情が、誰かにとっての希望にも絶望にもなりうる怖さ。現代にも残されているだろうエヴァ・スミスへの責任は、私自身の生活にも関わっているかもしれないと考えさせれた。
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『千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ (フランス1849年) 「女房を殺して、捕まえてもらいに来た」と市長宅に押しかけた男。その場に居合わせた作家デュマや市長たちは、男の自宅の血塗られた地下室を見に行くことに。男の自供の妥当性をめぐる議論は、いつしか各人が見聞きした奇怪な出来事を披露しあう夜へと発展する。
おススメポイント 入れ子構造/実在の事件・人物が登場/現実かフィクションか/煙にまかれる読書体験
* この世界に、私をその名で呼ぶ者は、1人しかいなかった。
― 市長の語る話から。1つの言葉、1つの台詞にクライマックスが凝縮されている。この一言のためにこの本を読んでいた、と感じることが時々ありますが、「その名」を読んだ時もそうでした。
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『敦煌』井上靖(1959年)
官吏任用試験に失敗した趙行徳は、開封の町で、全裸の西夏の女が売りに出されているのを救ってやった。その時彼女は趙に一枚の小さな布切れを与えたが、そこに記された異様な形の文字は彼の運命を変えることになる……。西夏との戦いによって敦煌が滅びる時に洞窟に隠された万巻の経典が、二十世紀になってはじめて陽の目を見たという史実をもとに描く壮大な歴史ロマン。
おススメポイント 史実を基にした歴史小説/「人類」を描いている/達観/自分の悩みなんて些末なことと思える
* 歩きながら行徳は、自分というものが今までの自分とはどこか違ってしまっているのを感じた。(略)つい先刻まで進士試験にこだわっていた自分がひどくつまならいものに思えた。(略)たった今彼が目にした事件は、学問とも書物ともまるで無関係なものであった。(略)人生への対かい方というものを、その根底から揺さぶるだけの烈しい力を持っていた。
― 力強い描写でもあり、くよくよしているときに力づけられる一文。
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『ナイルの水の一滴』志賀直哉(1969年)
『敦煌』とセットでご紹介いただいた、志賀直哉の短文。
(全文) * 人間というものが出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生れ、生き、死んで行った。私もその一人として生れ、今生きているのだが、例えて云えば、悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、何万年遡っても私はいず、何万年経っても再び生れては来ないのだ。しかもなおその私は依然として、大河の水の一滴に過ぎない。それで差支えないのだ。
― 物事の見方が180度変わった。
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『竹取物語』作者未詳(9世紀後半~10世紀前半頃)
竹取の翁によって光り輝く竹の中から見い出されたかぐや姫。美しく成長したかぐや姫をめぐって五人のやんごとない貴公子たちが恋の駆け引きを繰り広げるが…。
おススメポイント
みんなが知っているようで知らない話/世界初のSF小説/今読んでもぶっ飛んだ設定/昔の人の想像力の豊かさ
* ちょっと待って。天の羽衣を着てしまうと、心が人間の心ではなくなり、天人の心になります。そうなる前にひと言、言いおかなければ。
― 人間社会で育てなおされ、その心を大事にしたいとかぐや姫が想っている表れであり、人間関係も大切にしたいという思いが伝わってくる。
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「アメリカンスクール」小島信夫(1954年。(『アメリカン・スクール』に収録))
アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作「小銃」や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇「汽車の中」など全八編を収録。一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。
おすすめポイント
悲しい喜劇/アメリカを無条件に受け入れることの是非/日本人としてアメリカとどう付き合っていくべきか
* 「何故こんなに恥ずかしいめをしなければならんのでしょう」(「アメリカンスクール」)
― どういう立場で生きていくにせよ、日本人として1回はこういう自問をしなければいけないかな…と思います。
◆◆◆ そのほか話題に出た作品 ◆◆◆
・『三銃士』『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ ・森鴎外全集(ちくま文庫) ・『土佐日記』紀貫之 ・『抱擁家族』小島信夫 ・『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ ・『千夜一夜物語』 ・百物語 ・『高慢と偏見』ジェーン・オースティン ・『高慢と偏見とゾンビ』セス・グレアム=スミス ・『ベラミ』ギ・ド・モーパッサン
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少人数での開催となりましたが、そのおかげ(と言ってはなんですが)で、ご紹介いただいた作品から派生して、セットで読んでほしい本、その他のおすすめ本なども教えていただくことができました。
改めて、ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!