【第20回名作劇場 読書会開催レポート ~『竹取物語』~】
- 2019年3月3日
- 読了時間: 7分
課題図書:『竹取物語』作者未詳

【第20回名作劇場 読書会開催レポート 】
2019年2月16日(土)10時30分~ @ ライブラリーショップ&カフェ日比谷
『竹取物語』作者未詳
― 竹取の翁によって光り輝く竹の中から見い出されたかぐや姫。美しく成長したかぐや姫をめぐって五人のやんごとない貴公子たちが恋の駆け引きを繰り広げるが… ―
※※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意ください ※※
2019年2月は『竹取物語』を課題図書に、読書会を開催しました。
今回の課題本は、いつも以上に「なぜ選んだのか」と聞かれた気がします笑。
私はむしろ皆さんに問いたい、竹取物語の全文を読んだことがありますかと…!
ということで、原点回帰、日本最古の物語を読んでみようと思った次第であります。(…もしくはネタ切れとも言う。)
◆◆◆ 読んだ印象 ◆◆◆
参加者全員が、今回初めてちゃんと全文を読んだということだったので、まずは簡単に、読んだ印象を伺いました。教科書で習った方も、なんとなくの記憶は残っていたものの、読み直してみて、新鮮な印象を受けたようでした。
・SF作品のよう ・一種のギャグ小説 ・自分はいつから竹取物語(かぐや姫)を知っていたのだろうと思った ・暗唱させられた記憶 ・冒頭以外、まったく記憶になかった ・習ったはずなのに、自分の古文読解力に絶望 ・高畑勲オタクなので映画は観たが、わりと原作に忠実で驚いた ・意外にかぐや姫が残酷 ・媼(おばあさん)の存在の薄さ ・天人の地上への蔑みがひどい ・書き継がれていく中で、当時の人たちの価値観が混ざっていそう ・原文はとても簡潔。この余白から風情や感情を感じ取って読み継いできた、日本人の感性の豊かさ
◆◆◆ 現代的なお姫様 ◆◆◆
今回きちんと読んでみて意外だったのが、かぐや姫のお姫様像。 みなさんからも、かぐや姫は「現代的な感覚を持った女性」という意見が出ました。 求婚者が続々と現れ、翁に「男と女は結婚することになっている。将来のためにも結婚して欲しい」と言われますが、かぐや姫は次のように答えます。 「どうして結婚などということをするんですか」 当時の人々や昔の人々からしたら、衝撃的な台詞ではないでしょうか。当たり前すぎて考えもしなかった問いだったと思います。 かぐや姫はこの後、求婚者たちに無理難題を押し付けて、結婚を拒否し続けます。 日本最古の物語のお姫様が、王子様を待つだけのお姫様ではなく、自我を持った女性であったことに頼もしさを感じるばかりです。
◆◆◆ かぐや姫は美人だった? ◆◆◆
美人とされるかぐや姫ですが、作中では「光り輝くような」という表現だけで、具体的な容姿の描写はありません。読書会では、かぐや姫の容姿の話題で盛り上がりました。
・当時の美人の条件は、容姿よりも教養だったのでは。
・かぐや姫は雰囲気美人だった?
・歌や楽器が上手=美人
・白塗りしたりお化粧が濃かっただろうから、素顔なんて関係ないかも…
・美人だなんだと騒いでいるけど、竹から生まれたタケノコなのである
・手に入りそうで入らないのが美女感を高めた
あれ?なんだか辛口な意見ばかりになってしまいました…
作中で、かぐや姫は自分のことを「不美人だ」と言っているのですが、この台詞に対して参加者の方が「モデルが(モデル仲間の中では)自分なんて普通です、と言うようなもの」と仰っていたのが面白かったです 笑。
ほかに、「文学では美人の描写は少なく、醜い描写の方が詳しく描かれる」という意見が出たのですが、確かに、醜い描写や悪口の方が、作者の筆が生き生きとしている気がしますね。
◆◆◆ 真の主人公は? ◆◆◆
現代では『かぐや姫』と認識されているかもしれませんが、正式な作品名は『竹取物語』で、成立当初の通称は『竹取の翁』だったそうです。 そうなると、本来の主人公は翁? この物語は「天人女房譚」「異常出生譚」「地名起源説話」などいくつかの伝承説話の型が用いられていて、翁を主人公とすると「致富長者譚(=お金持ちになるお話)」としても読むことができます。 終盤で、天人は翁に次のように言います。 「(翁が)わずかな善行を積んだから、援助をしてやろうと、少しの間、かぐや姫をお前の下に降ろしてやった」 翁は、「かぐや姫の預け先」という名誉ある任務を託された、選ばれしおじいさんだったのですねぇ。 愛情込めてかぐや姫を育てて、結婚を無理強いするでもなく、欲にくらむこともなく、娘が月へ帰るとなれば号泣し、天人にちょっと刃向かってみたり… 翁は微笑ましい好人物に描かれています。
かぐや姫が静かに感情を表す分、翁の感情の激しさが際立っている気がします。 それにしても、かぐや姫が天に昇ってしまった後の、おじいさんとおばあさんのことが心配でなりません…
◆◆◆ 月を見る ◆◆◆
終盤で、かぐや姫が月で罪を犯し、償いをする為に地上に追放されたことが明かされますが、どのような罪を犯したのかは書かれていません。 結婚を拒んだから?地上界に憧れてしまったから?読書会でも答えは出ませんでした。 参加者の方が、「今、地球にいる自分も罰を受けている最中かもしれない」と意味深な発言をされて、場がちょっとザワつきました 笑。 「月の顔を見るのは不吉だからよしなさい」と止められても、月を見続けるかぐや姫。 みなさんも普段、空を見上げるかという話になったのですが、夜空を見上げながら帰る私が少数派だということに驚きました 笑。思わず月を見てしまう私も、もしかしたら月に呼ばれているのかも?
◆◆◆ 参加者イチオシの一文 ◆◆◆
* 今は昔、竹取の翁といふ者有りけり。
(星新一 訳:むかし、竹取りじいさんと呼ばれる人がいた)
― 日本の物語文学がここから始まったと思うと重要な一文では。
*「われ朝毎夕毎に見る竹の中におはするにて知りぬ。子となり給ふべき人なめり」
(星新一 訳:「竹とは、長いつきあいだ。高いとこ、滝のちかく、たくさんの竹、指にタコ。竹はわたし、わたしは竹。うちの子にしてもいいと思う」)
― 翁が竹と一体化する感じ。ほのぼの。
*「なんでふさることかし侍らむ」
(星新一 訳:「そうしなければならないって、なぜですの。わかりませんわ」)
― なぜ結婚しなければいけないのかと問うかぐや姫。日本最古の物語ながら、現代的な女性像だなあと思いました。
*「かぐや姫てふ大盗人の奴が、人を殺さむとするなるけり」
(星新一訳:「そもそも、こんな目に会い、死にかけたのも、もとはといえば、かぐや姫のせいだ。たちの悪いこと、泥棒以上だ。わたしを殺そうとして、こんな話を持ちかけたのだ」)
― かぐや姫をディスっているのが衝撃的な台詞。
* かひはかくありけるものをわび果てて死ぬる命をすくひやはせぬ
と書き果つる、絶え入り給ひぬ。これを聞きて、かぐや姫、「少しあはれ」とおぼしけり。それよりなむ、少しうれしきことをば、「かひあり」とは言ひける。 (≪ 貝はありませんでしたが、姫からお見舞いを頂いて、甲斐のほうは、このようにありました。でもそれほどの気持ちがあるのなら、どうして悲観のあまり死にそうな私の命を、匙ですくうように、救ってくださらないのか ≫ と書き終えるや、息絶えてしまった。これを聞いたかぐや姫は、ちょっぴりかわいそうに思った。この一件がもとで、ちょっぴりうれしいことを、「かいあり」と言うようになった。)
― 人が死んだというのに、「ちょっぴりかわいそう」。最後のオチと2回続けてのブラックジョーク。
*「見れば、世間心細くあはれに侍る」
(「ながめていますと、人の世の営みが、しみじみと心にしみるように感じられてくるのです」)
― だんだん月に帰る運命を感じるところが神秘的で古文らしい印象です。
* いまはとて天の羽衣着る折ぞ君をあはれと思ひ出でける
(江國香織 訳:「もうこれまでです。羽衣を着ようと思います。けれどもこの期におよんでも、あなたがいとおしく思えてなりません」)
― 今までのかぐや姫とはうって変わって女性らしい台詞。本当に愛情がこもっている。
※かぐや姫が帝へ贈った別れの歌ですが、他の現代語訳と違って、江國香織訳だけがはっきりと好意を表しているとのことでした。女性作家ならではのかぐや姫像になっているのでしょうね。
* あふことも涙に浮かぶわが身には死なぬ薬も何にかはせむ
(もう二度と、かぐや姫に逢うことはできないので、とめどなく流れる涙に身を浮かべているようなわしにとって、不死の薬など、なんの価値があろうか、なんにもならない。)
― 帝は不死を選ばなかった。中国の古典だと、不死を求めて死んでしまう物語があったりするので、日本とは対照的だと感じた。
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馴染みがあるようでちゃんと知らなかった「かぐや姫」。今回きちんと読んでみて、1000年以上前に書かれたにも関わらず、時代の先を行く作品であったことに驚かされました。
竹取物語読書会、人数が集まるか不安だったのですが、満席となり嬉しかったです。
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!

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