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【第19回 名作劇場読書会 開催レポート 】

  • 執筆者の写真: 劇場 名作
    劇場 名作
  • 2019年1月22日
  • 読了時間: 6分

読書会テーマ:古典・近代文学~自由紹介型~

【第19回 名作劇場読書会 開催レポート】


2019年1月19日(土)10時30分~12時30分@ ライブラリーショップ&カフェ日比谷 2019年最初の読書会は、自由紹介形式で開催いたしました。

1960年頃までに発表された作品をテーマに、参加者のみなさんにお好きな作品をご紹介いただきました。

恥ずかしながら、初めて知った作品(作家)もいくつかあって勉強になりました!


※※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意ください ※※


◆◆◆ 紹介された作品たち ◆◆◆


『生れ出づる悩み』有島武郎(1918年) ― 「人はいかに生きるべきか」自分の才能を信じて夢を追うのか、それとも今このままの現実を生きていくのか。画家になりたいという一途な想いを抱きながらも、家族の生活を支えるために、漁師という過酷な労働に従事しなければならない青年。自分の仕事を神聖なものにしようともがいていた作家の「私」は、同感の力をもって「君」の生活と苦悩を書き出していく。―


『尾崎放哉句集』『尾崎放哉随筆集』尾崎放哉 (1885‐1926年)

― 「咳をしても一人」などの句で知られる俳人・尾崎放哉は、一見他愛のないような、しかし、一度知ると忘れ難い、印象深い自由律俳句を詠んだ。「乞食坊主」と呼ばれ、人に嫌われ、失意と諦観の果てに所有した無常観。破天荒に生きた放哉の生活・文学・思想が彷彿とする作品群。―


『クラリモンド(死霊の恋)』テオフィル・ゴーチェ(1836年フランス)

― 聖職者ロミュオーは、高級娼婦クラリモンドに逢い一目惚れするが、叶わぬ恋に煩悶する。貴族との大饗宴の果てにクラリモンドが死に、ロミュオーは彼女の葬儀を執り行なうが、悲しみのあまり、彼は彼女の亡骸にキスをした。するとクラリモンドは一瞬蘇り、再会を約束して死体に戻る。その後、毎晩クラリモンドはロミュオーの夢に現われ…。フランス文学の魔術師ゴーチエが描く吸血鬼小説の傑作。―


『三四郎』夏目漱石(1908年)

― 熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく…。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを描いた青春文学の傑作。『それから』『門』へと続く、漱石の前期三部作の一つ。―


『ヒューマン・ファクター』グレアム・グリーン(1978年イギリス)

― イギリス情報部の極秘事項がソ連に漏洩した。スキャンダルを恐れた上層部は、秘密裏に二重スパイの特定を進める。古株の部員カッスルはかろうじて嫌疑を免れたが、彼が仲良くしていた同僚のデイヴィスは派手な生活に目を付けられ、疑惑の中心に。上層部はデイヴィスを漏洩の事実ともども闇に葬り去ろうと暗躍するが…。自ら諜報機関の一員だったグリーンが、追う者と追われる者の心理を鋭く抉る、スパイ小説の金字塔。―


『たけくらべ』樋口一葉(1895年) ― 廓の街に住む勝気な美少女・美登利は、お寺の息子・信如にほのかな想いを抱いている。しかしお互いを意識するにつれ会話はぎこちなくなり…。せつなく不器用な初恋を情緒あふれる文体で描いた一葉の名作。―


『タタール人の砂漠』ディーノ・ブッツァーティ(1940年イタリア) ― 辺境の砦でいつ来襲するともわからない敵を待ちながら、青春を浪費する将校ジョヴァンニ・ドローゴ。彼はそんな辺境の地から抜け出したいと思うのだが、迫り来るかもしれないタタール人の存在に、英雄願望を刺激され、砦の任務を継続する。何年も過ぎたある日、遂に不審な動きが見受けられるが…。幻想的な作風で、カフカの再来と称されたブッツァーティの代表作。―


『好色五人女』井原西鶴(1686年) ― 封建的な江戸の世にありながら本能の赴くままに命がけの恋をした、お夏・おせん・おさん・お七・おまんの五人の女。実際に起こった五つの恋愛事件をもとに、運命に翻弄されても最期は自分の意思で生きた潔い女たちを描く。『好色一代男』に続く、西鶴の傑作短編集。―



◆◆◆ 参加者イチオシの一文 ◆◆◆


好きな一文とあわせて、理由や作品の印象などをいただいたので、抜粋してご紹介いたします。



* 君よ、春が来るのだ。冬の後には春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし……僕はただそう心から祈る。

(『生れ出づる悩み』有島武郎)


 ― いつの時代にも地球の片隅で悩んでいる人がいる。すべての悩める者たちへの優しい目線と敬意に、胸がいっぱいになった。



*どんなに海が荒れても私はいつも平気なのであります。それは自分でもおかしいようです。よし、船が今微塵にくだけてしまっても、自分はあのやさしい海に抱いてもらえる、という満足が胸の底に常にあるからであろうと思います。丁度、慈愛の深い母親といっしょにいる時のような心持になっているのであります。

(『尾崎放哉随筆集』尾崎放哉)


 ― 孤独だけど悲観的ではなく冷静な視点なのは、海の側で暮らし、海の慈愛を感じていたからなのかもしれないと感じた文章。共感もあって心に残った。



一人のクラリモンドを持つのは、二十人の情婦を持つのにも均しい。否、あらゆる女を持つのにも均しい。彼女はその一身に、無数の清新な嬌艶とを蔵してゐる。

(『クラリモンド(死霊の恋)』テオフィル・ゴーチェ)


 ― クラリモンドの美しさと魅力を想像させる一文。この作品は美しい女吸血鬼と僧侶の恋物語です。あでやかでつややか。幻想的な夢の世界が繰り広げられています。



* 田端の小川の縁に坐った事もあった。その時も一人ではなかった。迷羊。迷羊。雲が羊の形をしている。

(『三四郎』夏目漱石)


 ― 主人公三四郎は美しい美禰子に思いを寄せますが、結局二人の間には何も起こらず、恋は終わってしまいます。ありきたりなストーリーですが、「ストレイシープ」という言葉一つによって、切なさを増しているように感じます。



*「でも父さんには必要だった」

(『ヒューマン・ファクター』グレアム・グリーン) 


 ― 手に汗握らないスパイ小説。葛藤を抱える主人公の心理描写が素晴らしい。ラストは苦い味。



*紅入り友仙の雨にぬれて紅葉の形のうるはしきが我が足近く散りぼひたる、そぞろに床しき思ひは有れども、手に取りあぐる事をもせず、空しう眺めて憂き思ひあり。 (『たけくらべ』樋口一葉)


 ― 情景が目に浮かび、心理描写も切なくて美しい場面。作中で水仙が出てくるのですが、これから水仙の季節になるのでこの作品を選びました。



*だが、今のところは読み終わったページの嵩はまだまだ薄く、それに比べてこれから読むべきページは無限に残っている。だが、中尉よ、それでもやはりひとつのページが終わり、人生の一部が過ぎ去ったことにはちがいないのだ。

(『タタール人の砂漠』ディーノ・ブッツァーティ)


 ― 時間は確実に過ぎていくことへの警告。自分も頑張らなきゃいけない。次があると思ってしまう人間の弱さと、時間があっという間に経ってしまう怖さを感じる作品。



*源五兵衛、うれしがなしく、これを思ふに、「江戸、大阪の太夫残らず請けても、芝居銀本にして捨てても、我一代に皆になしがたし。何とぞ使ひ減らす分別出でず。これは何とした物であらう」

(『好色五人女 巻五』井原西鶴)


 ― すべての最後の文が、「お金持ちになってどうしよう…」で終わるところが西鶴らしいと思います!

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前回の自由紹介型の際も、初めて参加くださる方がいつもより多かったのですが、初めての方には、課題回よりも参加しやすい感じなのでしょうか?

紹介型だとみなさんの好みや考えがより垣間見える気がして、楽しくお話を聞かせていただきました。

前回の紹介型から半年以上空けてしまいましたが、また開催したいと思います。


今回ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!






 
 
 
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