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【第12回名作劇場 読書会開催レポート ~『リア王』ウィリアム・シェイクスピア ~】

課題本:『リア王』ウィリアム・シェイクスピア


【第12回名作劇場 読書会開催レポート 】

2018年5月25日(金) 19時30分~ @ 銀座珈琲 数寄屋橋店 ~『リア王』 ウィリアム・シェイクスピア ~

1604年~1606年、シェイクスピア41歳の頃の作品。 ― 老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった ―

※※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。 ※※

(新潮文庫 福田恆存 訳 (88刷)から引用)

5月は、シェイクスピアの『リア王』を課題本に、読書会を開催いたしました。 『リア王』は、『ハムレット』『マクベス』『オセロー』に次いで書かれたシェイクスピア四大悲劇のひとつ。

個人的には面白くてあっという間に読み終えたのですが…開始早々、ほかの参加者の方々との温度差に気づくことに (笑)。 他のシェイクスピア作品と同様、『リア王』も台詞とト書きだけで構成された戯曲。戯曲は好みが分かれるだろうなと思っていましたが、やはり今までの課題本の中で1番、読むのに苦労したという声が多かった気がします。

読むのに「苦労した」方の主な意見は…

・行動や発言が唐突で分からない ・設定などのヒントが少ない ・100頁くらいまで苦痛 ・「シェイクスピアだ」「四大悲劇だ」と、持ち上げられているだけ説

辛辣な意見はほぼ男性陣からだったのですが、単に好みの差なのか、男女の差なのか、どうなのでしょう (笑)。 たしかに、台詞だけでポンポンと進むので、一言一句を拾わないと置いていかれてしまいます。 あと、ご都合主義感も否めないので (笑)、現実的に読んでしまうと入っていけないのかもしれませんね。

反対に、「面白かった」方の主な意見は…

・登場人物が多いけど整理されている ・舞台を観ている感覚で読めた ・声に出して読みたくなるカッコいい台詞が多い

面白かった側の方たちは、舞台を観る感覚で楽しんだ様子。 小説だったら読むに堪えないストーリーかもしれないけど、舞台だから許されるとのこと (褒め言葉) 。 「日本だと歌舞伎のようなものかも」という意見も出ました。歌舞伎もとんでもない展開だったりしますが、成立しているし面白い、たしかに似た感覚かもしれません。

◇◇◇ 恒例のツッコみ ◇◇◇

・そもそもの、コーディーリアに対するリアの理不尽な怒り ・ケントの変装になぜ気づかない ・エドガーの変装になぜ気づかない ・罵詈雑言のセンス  「薄汚い靴下野郎」(当時の貴族は絹の靴下) 「Z野郎」(当時の辞書で無視されたZの項目を指す) ・荒野をさまよったりしても、なぜか再会できる不思議 ・グロスターのエアー自殺 ・エドマンドの突然の改心

「みんな元気に喋るから悲劇と感じなかった」というツッコみにも笑いました。 悲劇的な展開が続きますが、悲壮な台詞や嘆きも「!」がつく威勢の良さで喋るので、たしかに、しんみりとした空気は感じないのかもしれません (笑) 。

■繰り返される “ Nothing ” 冒頭、コーディーリアの発した「何も ( “Nothing” ) 」(14頁) という一言から、リアとコーディーリアの悲劇は始まります。 娘の言葉に「無から生ずる物は無だけだ ( “Nothing can come of nothing.” ) 」と激怒するリア、<無から生じたコーディーリアという無償の存在>に気付いたときには、既に手遅れなのでした… そして、副筋であるグロスター親子も同様。 父と兄を陥れようと、兄エドガーの筆跡を真似た手紙を、父グロスターにチラ見せするエドマンド。 グロスターの「何だ、今読んでいたのは?」との問いに、エドマンドは「いえ、何も」と答えます (27頁) 。 グロスターとエドガーの悲劇も “ Nothing ” から始まるのでした。 注釈によると、この “ Nothing ” の一語は、全幕を通じていろいろな登場人物が口にしているようです。

■虚飾の剥奪 ― 貧乏人でさえ持っている「余計なもの」をすべて人間から取ったらあとに何が残るか。様々な虚飾に欺かれて、人間の実存には盲目だったリアが、見せかけの底を見抜き、すべてが「ごまかし」だと至る。 ― 狂気が間近に迫ってきた自覚とともに他人の苦しみを理解し、もののあはれを感得する心があらわれはじめる。

…なんていう解説を読んで、ふむふむ深いなぁと思ったりもしましたが、当読書会で出た『リア王』のまとめは、「リアの成長物語」でした (笑)。

「いずれもごまかしの混ぜ物、貴様だけが正味そのものだ。人間、外から附けた物を剥がしてしまえば、皆、貴様と同じ哀れな裸の二足獣に過ぎぬ」(112頁)

狂気と理性の狭間でリアが放ったこの言葉、うんうん、大人になれたね。(80歳を超えているらしいけど)

◆◆◆ 参加者イチオシの一文 ◆◆◆

不仕合せな生れつきなのでございましょう。私には心の内を口に出す事ができませぬ。(コーディーリア 14頁)

 ― この前の「私の愛情は私の舌より重い」と合わせて共感した台詞。私も、想うが故に素直に伝えられなかったり、上手く言葉にできないことがしばしば…

俺はこの預言を、いずれあの何百年も前のマーリンめにさせる積りだ、そうとも、俺の方があいつより先の時代の人間だからな。(道化 105頁)

 ― ここだけ道化が未来から来たかのような言動をとるところが、面白く恐ろしいと思った。シェイクスピアが実はタイムスリップしてきた人間なのかもしれません (笑) 。

人間、有るものに頼れば隙が生じる、失えば、かえってそれが強味になるものなのだ。(グロスター 135 頁)

 ― まさしく、無いものを数えず、有るものを数える。

うむ、この白い絶壁の、それ、あの恐しい天辺からな。上を仰いで見な、鋭く囀る雲雀の姿も見えなければ、声も聞こえない。上を見ろというのに。(エドガー 157頁)

 ― 台詞で空間を構築できてしまうところに、演劇的な力強さを感じた。観客もグロスターと同じく、無いはずの崖を見ることでしょう。

世に罪人はおらぬ、一人もおらぬ、一人もな。俺が後楯だ、よいか、告発者の口を封じる権力の持主、この俺がそう言うのだぞ。(リア 162頁)

 ― リアが見つけた人間の本性?

人は皆、泣きながらこの世にやって来たのだ、そうであろうが、(略) 、生れ落ちるや、誰も大声挙げて泣叫ぶ、阿呆ばかりの大きな舞台に突出されたのが悲しゅうてな。(リア 162頁)

 ― 人間社会に対するシェイクスピアの皮肉だろうなぁ。

このほかにも、みなさんから人気だった台詞は…

この俺に行くべき道などあるものか、それなら目は要らぬ、俺は目が見えた時には、よく躓いたものだ。(グロスター 135頁)

どん底などであるものか、自分から「これがどん底だ」と言っていられる間は。(エドガー 136頁)

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名作劇場読書会は、5月で誕生から1周年を迎えました~ 主催者ふたりだけで開催した第1回目を考えると感慨深いものがあります。 常連さんやご新規さんも少しずつ増えてきて、嬉しい限りです。 これからもゆるく楽しく名作本を発掘していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!

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