【第6回名作劇場 読書会レポート ~『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティ ~ 】
課題本:『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティ
【第6回名作劇場レポート】
2017年11月10日(金)19時30分〜 @ 銀座珈琲 数寄屋橋店 〜 『そして誰もいなくなった』アガサ・クリスティ 〜 1939年刊行(49歳)。 -その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが食卓についたとき、どこからともなく彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が。そして童謡のとおりに、一人また一人と…-
※※ 以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。 ※※ 11月は、ミステリの女王アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』を課題本に読書会を開催しました。
意外だったのは、参加者7名中6名が初読であったこと。あらすじは知っているけれど読んだことはない…というまさに名作劇場のコンセプトにぴったりの作品となりました。
みなさんも仰っていましたが、読んでみてまず感じたのは、その読みやすさ。訳のおかげもあるかもしれませんが、80年前の作品だということに改めて驚きます。童謡の詩から展開は読めるし、そもそも題名がオチになっているのですが、それでもなお「読ませる力」を持っているのもすごいですよね。
解説にあった「知的で粋な娯楽」「エンタテインメントとしてのミステリー」という言葉にも納得。
「既視感」「なつかしさ」という言葉も挙がりました。某探偵漫画で読んだような設定…と感じたのも、クリスティの影響が現代まで残っている証ではないでしょうか。
盛り上がったのは、ウォーグレイヴ判事ネタ。手の込みまくったセッティングと行動力はつっこまずにはいられませんでした。
参加者の中で犯人を当てられたという方はおらず、これを推理できた人はいるのか?と疑問に思いましたが、再読すると、初読では気付かなかった、判事の「ガイド」役が目につきます。なにより、男優賞を授与したい演技力。
わたしは再読したとき、「そのとき判事は…」的な裏での行動を想像してしまい、ジワジワしてしまいました…きっとすごい動き回ってたんだろうな…
島の描写がいい、という意見も印象的でした。「行き止まり」と考えたことはなかったですよね。今度、島に行くことがあったら、違う見方ができそうです。将軍の気持ちになってしまったら、危ないですが…
個人的に、殺される順番(=罪が軽い順)が疑問だったのですが、みなさんの話を聞いて納得しました。たしかにマーストンだけは(恐らく)過失なんですよね。ヴェラはヒューゴへの思いは語っていますが、シリルへの償いの気持ちは出てきていない。「女性は魔物です」という台詞が、クリスティの本心なのでしょうか…
マーストンならきっと泳いで渡れちゃうから先に殺された、という意見もおもしろかったです。
最後に、忘れてはいけないのが作品名。発表当時の原題は "Ten Little Niggers"だったのが、差別用語への配慮から、現在の"And Then There Were None" に改題されました。個人的には、歴史や当時の文化を知るためにも原文尊重派なのですが、この作品に関しては、現在の題名が圧倒的に秀逸!邦題の「そして誰もいなくなった」も名訳ですよね。
♢♢ 名作劇場的キーワード ♢♢
・最初のうちは誰が誰だっけ…?
・現代版はどうなるか。ツイート実況。
・島を買い取るってすごい… ・なにかと素直な9人。招待主あやふやだけど、招待受けちゃう。次々に被害者が出てるけど、結構冷静。食事もちゃんと作ってみんなでいただきます。 ・将軍はちょっとかわいそう…
・怖がってるけど、誰も兵隊の人形を片さないし、数も律儀に数えます。
・ピストルが戻ってきたとき、黙っていればよかったのに。
・いやいやさすがに判事見つかっちゃうんじゃ…
・海の匂いがするほどの海草をよく手に入れましたね。
・スポーツウーマン
・死んだふりもできる判事。運ばれてもバレないさすがの演技力。
・ロマンティックなお手紙
♢♢参加者イチオシの一文♢♢ *「腕にスズメバチがとまってますよ」
(クリスティ文庫 青木久惠訳 36頁)
― 話のそらし方下手すぎ!冷静なヴェラにも笑えた。
*島と聞いただけで、夢がふくらむ。ほかの世界から切り離されて―島は島だけで、一つの世界を作っている。
(クリスティ文庫 青木久惠訳 54頁)
― 島の描写がこの上なく素晴らしい!!
*一階のダイニングルームでは、ロジャーズが不思議そうな顔をしてつっ立ていた。
テーブルの真ん中においてある陶器の人形を見つめている。
彼はぶつぶつとひとり言を言った。
「おかしいなあ!たしか、十個あったんだが―」
(クリスティ文庫 青木久惠訳 114頁)
― 何か始まる…!という予感。
*"島のいいところは、いったんそこに行き着けば―それ以上先に行けないことだな……そこで行き止まり、おしまいだ……"
(クリスティ文庫 青木久惠訳 121頁)
― 島をそんな風に捉えたことがなかった。
*「判事のおはこ、事件要点の説示のはじまり、はじまり!」
「以上で、ひとまず休廷とあいなります……」
(クリスティ文庫 青木久惠訳 219頁・220頁)
― 急におちゃらけた人出てきた!エンタメ感。
*アームストロング医師の力では絶対に無理だ。彼は腕力にすぐれた男ではない。
(クリスティ文庫 清水俊二訳 294頁)
― クリスティのドヤ顔が見えた。("Armstrong" = 剛腕 )
*「今日は、島の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、信号を送ってみよう。むこうの崖の上を歩いている若いやつらの中の頭のいいのが、SOS信号を見て、わかってくれるんじゃないかな。夜になったら、焚火をたいてもいいな―(後略)」
「SOS信号のわかる人がいるはずだわ。」
(クリスティ文庫 清水俊二訳 315頁)
― 読んでいて楽しかった文章。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- ミステリ作品であることに加え、過去最多人数での開催でしたので、どんな読書会になるか、実は始まる前は不安だったのですが、いざ始まってみると、(愛のある)つっこみの数々に笑いの絶えない2時間でした。
ご参加いただいた方、楽しい時間をありがとうございました!