【第4回名作劇場レポート ~『悟浄出世』『悟浄歎異』中島敦 ~ 】
『悟浄出世』『悟浄歎異』中島敦
開催日:2017年9月9日(土)10時
場 所:BUNDAN COFFEE & BEER in 日本近代文学館
1942年(昭和17年)刊行。
―流沙河の河底に住む妖怪、悟浄。彼は何を見ても何と出会っても「何故?」とすぐに考え、「我とは何か?」といった疑問を抱かずにはいられない病に罹っていた。賢人たちに教えを乞おうと旅に出た悟浄が見つけた答えとは?―「悟浄出世」
―三蔵法師、悟空、八戒と共に、天竺を目指す悟浄。「観測者」悟浄から見た三人の姿。―「悟浄歎異」
♢♢名作劇場的キーワード♢♢
・何故何故何故
・答えのない問い
・神経衰弱
・哲学入門書
・観察者
・悟浄愛しい
・注)河童ではない
・成長
・考えるよりまず行動せよ
天才悟空もいいけれど、悟浄みたいな役割もきっと必要。他者の美点も弱点も冷静に見つめて、妬むのではなく、賛美できる悟浄もすごい奴だと思うのです。
♢♢参加者イチオシの一文♢♢
*「幸福だと? そんなものは空想の概念だけで、けっして、ある現実的な状態をいうものではない。果敢ない希望が、名前を得ただけのものじゃ。」(「悟浄出世」)
*ふと、眼を覚ましたとき、何か四辺が、青白く明るいことに気がついた。夜であった。明るい月夜であった。大きな円い春の満月が水の上から射し込んできて、浅い川底を穏やかな白い明るさで満たしているのである。悟浄は、熟睡のあとのさっぱりした気持で起上がった。とたんに空腹に気づいた。渠はそのへんを泳いでいた魚類を五、六尾手掴みにしてむしゃむしゃ頬張り、さて、腰に提げた瓢の酒を喇叭飲みにした。旨かった。ゴクリゴクリと渠は音を立てて飲んだ。瓢の底まで飲み干してしまうと、いい気持で歩き出した。
底の真砂の一つ一つがはっきり見分けられるほど明るかった。水草に沿うて、絶えず小さな水泡の列が水銀球のように光り、揺れながら昇って行く。ときどき渠の姿を見て逃出す小魚どもの腹が白く光っては青水藻の影に消える。悟浄はしだいに陶然としてきた。 (「悟浄出世」)
*俺みたいな者は、いつどこの世に生まれても、結局は、調節者、忠告者、観測者にとどまるのだろうか。けっして行動者にはなれないのだろうか?(「悟浄歎異」)